時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは兵庫県の70代の方からのお便り。昔の日記をめくり、思ったことは――。
恩恵に気づく
「相変わらずAはリビングで寝ることが多い。夜勤から帰宅し、朝食を食べ、テレビを見ながら眠り込んでしまうのは仕方ないこと。Bが2階から降りてくる前にAを起こすのが間に合わず、Bの『起きろ!』の一声でたたき起こされる。あ~あ」
3年ほど前の日記から書き写してみた。Aは息子、Bは夫である。息子は就職氷河期世代。契約社員で、郵便局の深夜勤務を続けている。きっちりした性格の夫は、日記のように、「ゆるい生活を送る息子」が気に入らないようだ。
時々ニュースで聞く。高齢の父が同居の息子を殺すとか、息子が父を殺すとか……。わが家も同じようなイライラが募っているのではないか。
大人になっても低賃金だったり、格差があったりするこの世の中、自分より過酷な生活を送る人はたくさんいるはずだ。幸いにもわが家は、夫が一生懸命働いてくれたおかげで無事に生活できている。息子もその恩恵を受けてきた。
私たちは、ありがたいことにまだ恵まれているほうだと思うべきなのかもしれない。日記をめくりながらそう気づけたことが収穫だった。