2023年10月8日に逝去された歌手の谷村新司さん。「アリス」として、ソロとして、作曲家として…長年にわたり音楽業界を牽引した谷村さんを偲び、訃報が報じられた16日以降、国内外を問わず悼む声が広がっています。「冬の稲妻」「チャンピオン」などのヒット曲を次々と送り出し、81年にアリスとして活動停止後も、87年に再開。2013年には26年振りにアルバムをリリースするなど、60代を迎えてもチャレンジを続けていた最中の訃報でした。谷村さんの楽曲に支えられてきたというしろぼしさんが、谷村さんへの感謝を綴ります
夜逃げを決断した時、コンサートを思い出した
谷村新司さんが74歳で死去したことが10月16日に発表された。既に10月8日に亡くなっていたと知りショックだった。
8日、私は福祉バザーに寄付する物品を家の中で探し、谷村さんの以前のオフィシャルファンクラブ「Zieg Field(ジグ フィールド=1986年~2003年)」に入会していた頃の冊子、青山劇場のコンサートのチケット、購入したビデオなどが箱から出てきて、生涯のファンと決めている大関・貴ノ花(横綱の3代目・若乃花、横綱・貴乃花の父親)の書籍とともに絶対に捨てられない、と思ったのである。それと同時に、谷村さんが病床にあることをインターネットやテレビ放送で知り、嫌な予感もしていた。
1991年、私が39歳の時、谷村さんの青山劇場でのコンサートに行ったことで、一家の危機を乗り越える勇気をもらった。
私は、決断力がなく、何かを決めなくてはならない時は、勤めていた東京都中央区の会社の近くにある日本橋を渡ることにしていた。日本橋を渡りながら考え、そして渡り終えた時に思いついたことを実行するのである。
風が冬に向かうことを知らせる夜、時刻は9時を過ぎていた。私は日本橋をゆっくりと渡り始めた。「どうしてこんなに借金ができたのだ。この先は絶望しかない。一家心中をしようか、夜逃げをしようか」と考え、橋の下を流れる川に映る明かりが涙でかすんで見えた。