俳優の草笛光子さん(左)と脚本家・演出家の三谷幸喜さん(右)(撮影=天日恵美子)
第一線で活躍し続ける俳優の草笛光子さんが、「いま会いたい人」と対談する連載がスタートします。第一回のゲストは、2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をはじめ、数々の作品で草笛さんと仕事をともにしてきた三谷幸喜さん。戦った数だけ、信頼関係も築かれて――(構成=篠藤ゆり 撮影=天日恵美子)

<前編よりつづく

あれは演技?それとも撮影中の呪い?

三谷 オンに入った草笛さんは、顔を汚すメイクも徹底的になさる。落ち延びた比企尼もそうでしたが、とりが農民に扮して逃げるときもすごかった。

草笛 ああ、あれはそこらへんにあった葉っぱをむしって、歯にこすりつけたの。

三谷 これは僕が書いたホンではないけれど、『老後の資金がありません!』という映画でちょっとだけ共演させていただいたときは、毒蝮三太夫さんに化けるというものすごいことをやってらっしゃった。

草笛 あのときはメイクだけじゃなく、実際に歯もなかったのよね。撮影中に1本抜けちゃったから、そのまま出たの。

三谷 あれには参りました。僕は絶対笑っちゃいけない設定だったけど、我慢できなかった(笑)。そこまでされる女優さんをあまり知らないし、脚本家としては、ドラマのでき上がりを見て「なるほど。草笛さんはこう仕掛けてきたか」と毎回思うのが楽しみ。

仕掛けると言えば、僕は草笛さんが東宝ミュージカルで三木のり平さんや森繁久彌さんたちと共演されて、本番中にいろいろ仕掛けられるお話が大好きなんですよ。

草笛 みんな舞台で私を笑わそうと、なにかしら仕掛けてくるの。笑うまで引っ込まないし、そういうところは本当にしつこかったわね。(笑)

三谷 それも信頼関係というか、みんな草笛さんのことを愛してらしたんでしょうね。