俳優の草笛光子さん(左)と脚本家・演出家の三谷幸喜さん(右)(撮影=天日恵美子)
第一線で活躍し続ける俳優の草笛光子さんが、「いま会いたい人」と対談する連載がスタートします。第一回のゲストは、2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をはじめ、数々の作品で草笛さんと仕事をともにしてきた三谷幸喜さん。戦った数だけ、信頼関係も築かれて――(構成=篠藤ゆり 撮影=天日恵美子)

一緒の仕事はいつも戦いです

草笛 この連載を始めるにあたって、最初の回はやっぱり三谷さんにご登場いただこうと思いまして。

三谷 そうでしたか。ありがとうございます。最初に草笛さんとお仕事をご一緒したのは、もう10年前になりますね。

草笛 ニール・サイモンの戯曲『ロスト・イン・ヨンカーズ』を三谷さんが演出なさって。

三谷 その後、僕が書いたドラマにもいくつも出ていただきましたが、草笛さんとのお仕事は、僕にとって毎回戦いです。

草笛 私、そんなに三谷さんを困らせてるかしら。(笑)

三谷 そういう意味ではないんですけど、たとえば2016年の大河ドラマ『真田丸』では、真田信繁の祖母・とりを演じていただきましたよね。そのとき草笛さん、「とりが死ぬときは、馬に乗って霧のなかを去っていきたい」とおっしゃって。

草笛 最後、馬だけが戻ってくる、そんなイメージがあったのね。それを誰かにお話ししたら、いつのまにか三谷さんのお耳に入ってしまって。

三谷 物語の流れを考えると、とりが馬で去っていく設定はやはり無理がありまして(笑)。でも、僕なりにとりの最期を印象的なものにしようと思って、臨終の際に一度生き返る、というのを考えてみたわけです。

草笛 脚本をいただいて、私、困っちゃった。プロデューサーに「どうしましょう、とても出られないわ」と泣き言を言ったら、「そうですよねえ」と同情されましたよ。