日本は本当に先進国?
本来、結婚はともかく「恋愛」では、雇用形態や年収で「交際するか、しないか」を決める必要はさほどないはずで、せいぜいデートで贅沢できるか否か、迷う程度でしょう。
ですが、私が’15年に取材した若者たち(おもに、ゆとり世代)に比べ、いまのZ世代の状況はさらに深刻です。
就職したあとで「恋愛できる身分じゃない」と考えるだけでなく、就職する以前、まだ学生の段階で「恋愛どころじゃない」「そんな余裕もない」と追い詰められている若者が、大勢いるのです。
20代への取材では、「(節約する)親に申し訳なくて、大学の入学金を銀行から借りた」や「奨学金の額がハンパじゃなくて、朝起きた瞬間からバイトのことしか頭にない」といった声が次々と飛び出しました。
20代半ばの会社員男性(関西の有名私立大卒)に至っては、約700万円の奨学金を返せずに消費者金融に手を伸ばし、見かねた会社が一部肩代わりしていたほどでした。
実は、いまや4年制大学(昼間部)に通う学生のおよそ半数(49.6%)が、奨学金を借りています(’20年日本学生支援機構「学生生活調査」)。
しかもその借入金額は平均で310万円にものぼり、毎月1.5万円程度を約15年間かけて返済するのが一般的なのです(’22年労働者福祉中央協議会「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」)。
この状況で、日本は本当に先進国と言えるのでしょうか。
※本稿は、『恋愛結婚の終焉』(光文社)の一部を再編集したものです。
『恋愛結婚の終焉』(著:牛窪恵/光文社)
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