人様に苦笑させないおみやげを選ぶのは難しい
こうした自省を経て、最近はなるべくおみやげの量を減らし、食べ物や化粧品など形の残らない消耗品を選ぶことを心がけている。
しかしつい先日も、旅から戻ったスーツケースのなかからお釈迦さまの顔をかたどったずっしりと重たい木製の小物入れが出てきて、息子から「それ、どうするのさ」と冷ややかな指摘を受けた。
とっさに「もちろん自分で使うよ」と答えたが、友人にあげるつもりで調達したのが本当のところだ。
息子に水を差されて、ふと冷静になる。やはり自分には、人様に苦笑させないおみやげを選ぶのは難しい。
『歩きながら考える』(著:ヤマザキマリ/中公新書ラクレ)
パンデミック下、日本に長期滞在することになった「旅する漫画家」ヤマザキマリ。思いがけなく移動の自由を奪われた日々の中で思索を重ね、様々な気づきや発見があった。「日本らしさ」とは何か? 倫理の異なる集団同士の争いを回避するためには? そして私たちは、この先行き不透明な世界をどう生きていけば良いのか? 自分の頭で考えるための知恵とユーモアがつまった1冊。たちどまったままではいられない。新たな歩みを始めよう!