人様に苦笑させないおみやげを選ぶのは難しい

こうした自省を経て、最近はなるべくおみやげの量を減らし、食べ物や化粧品など形の残らない消耗品を選ぶことを心がけている。

しかしつい先日も、旅から戻ったスーツケースのなかからお釈迦さまの顔をかたどったずっしりと重たい木製の小物入れが出てきて、息子から「それ、どうするのさ」と冷ややかな指摘を受けた。

とっさに「もちろん自分で使うよ」と答えたが、友人にあげるつもりで調達したのが本当のところだ。

息子に水を差されて、ふと冷静になる。やはり自分には、人様に苦笑させないおみやげを選ぶのは難しい。

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