右端が八郎、隣は弟の節(たかし 後に原爆で逝去)。左端は姉の喜美子(若くして病没)(写真提供◎佐藤愛子さん)

美術学校でニセ学生、暗躍

八郎はやることが奇抜でしたから、八郎に会った人、話を聞いた人はそのことを鮮烈に覚えていたものです。家族は慣れっこでしたけど。(笑)

私が物心ついた初めから、何かと世間じゃ有名な人でしたよ。作家であり、不良であり、ニセ学生であり。

ニセ学生というのはね、上野の美術学校(今の東京藝術大学)に友だちが多くて、仲間と一緒に何年も美校に通っていたんです。あまりに堂々としているから、守衛も教授も本モノの学生だと思い込んでいた。

漫画家の小野佐世男が、ニセ学生の八郎がいかに困った上級生だったかを書いていましたよ。先輩ヅラして新入生を校庭に並ばせて、50銭ずつ集めては卑猥な唄を準校歌だといって教え込んだ、と。

上野動物園が美術学校と崖を隔てた隣にあったもので、ちょうど崖の下が七面鳥とホロホロ鳥の囲いだったのね。八郎が釣り竿で七面鳥を釣り上げて、仲間と焼いて食べちゃった。

徐々に鳥が減っていくので動物園長が校長に手紙を出したの。「貴校の猿どもがわが園の鳥を獲って困っている。取り締まってくれ」と。そうしたら校長は「わが校の猿は野放しだから、取り締まるわけにはいきません」って。(笑)

●サトウハチローさんの生涯と作品
年譜は『落第坊主』(サトウハチロー:著)、『うたうヒポポタマス』(宮中雲子:著)、『サトウハチローものがたり』(楠木しげお:著)などより編集部作成