海に降りない鮭は、身が白いまま

日本では、鮭と鱒の明確な区別はなく、鮭コーナーには鮭も鱒も一緒に並んでいます。

鮭といえば、川で生まれ、海に降り、また生まれた川に戻ってきて産卵することが知られていますが、ややこしいことに、鮭も鱒も、川にいるものと海に降りたもので名前が変わったりします。

たとえば、渓流釣りでお馴染みのニジマスは海に降りるとサーモントラウト(またはトラウトサーモン)、ヤマメは海に降りるとサクラマス。

海に降り、広い場所を回遊しながらカニやエビ、オキアミなどをたっぷり食べて大きくなった天然ものや、赤色色素を含むエサを与えられて養殖されたものが、赤身となり、鮭コーナーに並んでいるわけです。

一方、海に比べて生存競争のリスクが少ない川に残る鮭や鱒もいます。こちらは、海に比べてエビやカニ、オキアミなどを大量に食べるのは不可能。だからサイズは小さく、身は白いまま。同じ魚とは思えないほどの違いです。

鮭の卵のすじこやいくらの赤い色もアスタキサンチンによるものです。アスタキサンチンは強い抗酸化作用があり、肌を老化から守る美容成分としても知られています。荒波を生き抜き、身をボロボロにしながら川を遡上して産卵する……鮭にとってアスタキサンチンは、過酷な環境から身を守り、新たな命を生み出すために欠かせない成分。アスタキサンチンが少ない卵は孵化しないと言われています。
 

イメージ(写真提供:Photo AC)

赤い身の色は鮭の命をつなぐためのものだったとは! 鮭の赤色がますますパワフルに輝いて見えてきます。

◆「なりっち食堂」の連載一覧

ごはんに化ける ズルイおつまみ
(著:藤岡操/EDITORS)発売中!

コロナ禍のいま、自宅で楽しむおつまみの本が人気です。
私は飲むけれどパートナーは飲まないというケースや、お酒を嗜む夫婦のほかに子どもがいるケースも少なくはありません。
そこで、ワインのおつまみだけど、ちょっとしたアレンジで晩御飯のおかずにもなる! 1品つくれば家族みんなで楽しめるそんなレシピを集めました。
難しいことも面倒なこともなし。身近な食材と調味料の組み合わせだけで、楽しみはうんと広がります。どこで売っているのか分からないおしゃれ過ぎる食材も使用していません。食材も、料理の工程も少ないものばかりです。
揚げ物を食べたいけれど衣の準備が面倒……ならば、春巻きの皮を使ってパリッと焼こう!
冷蔵庫に肉も魚もない……ならば、ゆで卵と粉チーズでご馳走にしちゃおう!
和風の煮物とワインを合わせたい……ならばオリーブオイルと黒コショウをかけるだけで相性抜群に!
そんな気楽な発想で、ワインと一緒の晩ごはんを自由にのびのび楽しみませんか?
版型はコロンとした正方形に近い可愛いかたち。簡単な工程なので、本と睨めっこする必要はありません。いつまでも手元に置いておきたい、パラパラ眺めるだけで楽しくなれるそんなレシピ本です。