メタボ予防で認知症のリスクが上がる?

アッカーマンシア菌には肥満を改善する働きがあります。こうした肥満を改善する作用をもつ腸内細菌のことを、一般の人向けのメディアでは、「ヤセ菌」と呼んでいます。ダイエットしたい人には興味深い話ですね。

しかしダイエットというのは、誰にでも必要なものではありません。とくに65歳を過ぎたら、肥満解消はほどほどにしたほうがよいというのが私の考えです。

順天堂大学大学院が行った東京都文京区に住む高齢者1615名(男性684名、女性931名)を対象にした研究があります。

研究の内容を簡単にいうと、認知症やその前段階である軽度認知障害を発症しやすいのは肥満なのかサルコペニアなのかを調べること。サルコペニアは、加齢とともに筋肉が減少していく現象のことです。

研究の対象になった人たちは、「正常」「肥満」「サルコペニア」「サルコペニア肥満」の4つのグループに分けられました。サルコペニア肥満というのは、太っていて筋肉も少ない人のことです。

それぞれのグループの認知機能を調べたところ、正常と肥満のグループは、認知症と軽度認知障害の発症率にはほとんど差はありませんでした。つまり肥満でも筋肉さえあれば、認知症の発症率は健常者と変わらないということになります。

ところがサルコペニアのグループでは認知症のリスクが高くなり、さらにサルコペニア肥満のグループになると健常者の6倍ぐらい認知症が増えることがわかったのです。

本記事はおもに70歳前後の人たちに向けて書いていますが、70代の人たちにとって大事なのは、「筋肉を落とさないライフスタイル」です。

50代くらいまではメタボリックシンドローム(メタボ)の予防のためにダイエットしなさいと、盛んにいわれてきたと思いますが、少なくとも高齢者と呼ばれる65 歳を過ぎたら、肥満を気にするよりも、筋肉をつけることのほうが重要です。

メタボ予防にばかり目を奪われると、逆に認知症のリスクを上げてしまうのです。

※本稿は、『70歳からの腸活』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。


70歳からの腸活』(著:内藤裕二/エクスナレッジ)

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