「私は熟練したプロの技を見るのが大好き。たとえばジャニーズでは、『ふぉ~ゆ~』の辰巳雄大くんが好きなのですが、彼のダンスって、手指の先の動きや目線の流し方から心情が伝わってくるんです。彼を見ているだけでその歌の物語が頭に浮かぶというか、ダンスなのにお芝居を観ているような感じ。浅井さんも同じで、マスクをつけて闘っているのに感情が見て取れる。なにより所作がセクシーで、高いところから落下する演技ひとつとっても、浅井さんならではの色気があるんですよ。動きを見ただけで彼だと一瞬でわかります」
小夜子さんは、推しに対する感情は「愛でる」気持ちに近いと言う。
「よく絵画やオペラが好きな人が、○○の絵は筆のタッチが素晴らしいとか、高音の伸びが見事だとか言うじゃないですか。それと同じで、ただひたすら推しの技術の高さに見とれ、惚れ惚れしている感じです」
ライダーやスーパー戦隊ものには、1年を通して開催される「ヒーローショー」がある。小夜子さんもすでに数十回、現地に足を運んでいる。かかる費用もそれなりでは?
「ショーは地方でも開催されていて、北海道から九州まで行きました。ヒーローの世界観が大好きで、それに少しでも浸りたいから。もちろん費用はかかるけれど、Jr.担だった頃に比べれば安いもの。堂本光一くんの舞台『Endless SHOCK』に出演する辰巳くんを一目見るため、帝国劇場に32回通ったことがありますが、チケットは1回1万円超え。ヒーローショーは1600円とか2800円ですから」
かつて、大勢のJr.の肩ごしからチラリと見える“自担”(自分の担当=推し)の表情や仕草を見るだけで心が満たされた、その精神は今も健在だ。
「日曜の朝にテレビでスーパー戦隊ドラマを観ながら、主人公を演じるイケメン俳優ではなく、変身後のアクションや芝居に萌えてしまう。こういう生きがいがあるから、毎日頑張れるのだと思います。でも、やっていることは昔と変わらないですよね(笑)」
現実の世界での浮気とは違い、いくら推しに気持ちを傾けても誰も傷つかない。むしろ精神的に満たされているぶん、夫や家族に優しくできると言う人もいる。唯一デメリットがあるとしたら、お金がかかることくらいだろうか。
何かを全力で推す行為は、人にトキメキと幸福感をもたらしてくれる。今回の取材を終え、筆者はこれからもどんどん好きなものを追いかけて、沼にハマっていこうとあらためて心に誓った。だって推しのいる人生は、こんなにも楽しいのだから!