きらびやかなステージで活動するアイドルや俳優。彼らに恋し、全身全霊で応援を続ける女性たちがいる。好きな相手を“推し”と呼び、とらわれて抜け出せない様子を“沼”と表現する彼女たちの気持ちは──

出会う前と後とでは、幸せ感が全然違う

人生、好きなものがあると楽しい。過剰なまでに愛情を注げるものがあるともっと楽しい。落ち込むことがあっても、それを思うだけで生きる気力が湧いてくる。そんな何かを持っている人は幸せだと思う。

筆者にとっては『週刊少年ジャンプ』の人気マンガ『銀魂』がそうだ。魅力的な登場人物たちが時に笑わせ時に泣かせてくれる、架空の世界の物語。“推し”(応援している大好きな相手)は土方十四郎。彼のために応援上映(映画館でペンライトを振り、声援を送りながら作品を観ること)に足を運び、同好の士とのオフ会を楽しむ時間は、生きる原動力になっている。マンガ連載は終了したが、“萌え”はまだまだ継続中だ。

「こんなに綺麗で格好いい人たちが現実に存在しているとは思いませんでした。彼らに出会う前と後とでは、幸せ感が全然違います」と目を輝かせるのは、韓国のヒップホップグループ「BTS(防弾少年団)」ファンの雪さん(52歳・仮名、以下同)だ。BTSは全米アルバムチャートで1位を獲得するほど、全世界で人気沸騰中の7人組スーパーグループである。

雪さんがBTSにハマったのは2017年の9月。テレビのCS放送で見かけ、スタイリッシュで垢抜けた外見に興味を引かれたのがきっかけだった。

「カラフルな髪の色に女の子のようなメイク。そして脚が長くて抜群にスタイルがいい。まずそのルックスに目がくぎづけになりました。ネットで動画を検索してみたらダンスも歌も死ぬほどうまくて、あっという間にBTS漬けに。週末をほぼ飲まず食わずで過ごし、気づいた時には体重が2㎏減っていてビックリです」

ファンクラブに入会した雪さんは、その年の12月に行われた握手会でリーダーのRMと対面。もともと別のメンバーが好きだったが、「会いたかったです」と言われた瞬間、ピュアな笑顔に2秒で恋に落ちた。

「ただ握手会の時、若いファンには気軽に接しているのに、私の番になった途端、目上の人に対する韓国式の丁寧な握手になったんです。その時ばかりは年齢差を意識させられてショックでした。私にも普通に握手してほしかったな(笑)」

BTSは、動物愛護や児童支援などの慈善活動を熱心にしていることでも知られている。なかでもRMはIQ140超えの頭脳を持ち、グループをけん引している知性派だ。

「見た目が美しいだけでなく、人間的にも素晴らしいところが彼らの最大の魅力なんです。以前RMがライブ終わりの挨拶で、『僕はあなたたちに自分を愛する方法を教えてもらった。あなたたちも僕らを利用して幸せになってください』と言ったのですが、本当に嬉しい言葉をくれるなあと感動しました。もう『尊い』という言葉以外出てきません」