「大変なことばっかりだけれど、大変さを補ってあまりある素晴らしい瞬間があるので、歌にするのはそっちだなと思って詠んでいました。」(俵さん)

物事の明るい面を探す

 短歌は、続ける面白さもあるよね。やはり20代には20代にしか見えない景色があるし、60代には60代にしか詠えない歌がある。『サラダ記念日』を読み返すと、「20代の私ってこんなだったんだ」と感じるし。作っておいてよかったなと思います。

岡本 いわば人生の軌跡みたいなものなんでしょうね。

 60代になると病気も身近になり、老いも感じます。でも、そのなかから「楽しいこと」「明るいこと」を見つけたい。物事を肯定的に見たいし、短歌はそのためのいい器だと思っています。

岡本 おこがましいですが、私が短歌を詠んでいくうえで意識していることと、俵さんの歌から感じることは近い気がします。私も物事のいい面を見出したいと思っているし、誰にでも伝わる平易な言葉で伝えたい。

 うれしい~! 失恋の歌は味わい深いから、それはそれでいいんですよ。でもそれ以外は、人生の素敵なところを歌にしたいよね。こんなイヤな奴がいたとか、言葉にして残すと、後で読み返してまた腹が立っちゃうから。(笑)

岡本 そうですね。

 シングルマザーとして子育てをしている時は、特にそう思っていた。大変なことばっかりだけれど、大変さを補ってあまりある素晴らしい瞬間があるので、歌にするのはそっちだなと思って詠んでいました。