航一さんが月1回開催する子ども食堂(写真提供◎航一さん)

子を預ける背景に見られる変化

航一さんは、血のつながりはないものの、育ててくれた両親の「他者のために何かをする」というDNAを色濃く受け継いだ。学業に励む一方で、「子どもたちには学校、家庭以外の第3の居場所が必要」だと、月1回「ふるさと元気子ども食堂」の運営に携わり、さらに熊本県警察本部長委嘱の少年サポーターとして、少年らの支援にも乗り出す。

宮津ファミリーホームの看板やパンフレットづくり、県内に8つしかないファミリーホームで構成される協議会の事務局員も務めるなど、東奔西走の毎日だ。さらに講演会では、日本では家制度や血縁が重んじられるが、里親や特別養子縁組で育つのも「家族の一つのかたち」だと説いている。

「『ゆりかごは育児放棄を助長する』などと賛否両論ありましたが、実際に161人が預けられたということが、社会の現実を物語っています」(航一さん)

宮津夫妻が預かる里子の背景も16年間で変わってきている。以前は非行傾向の子どもが多かったが、近年は子どもの発達障がいなどの育てにくさを理由に預けられるケースが多くなったという。

みどりさんが言う。「子どもには帰る家が必要ですから、みんなで支え合っていかなければいけない。自分の子どもたちにはできなかったことも、新たに里子を育てる時には叶えられる。日々子どもを養育しているから毎日が楽しいのだと思いますね」

一人でも多くの子どもを、幸せな記憶を持たせて社会に送り出したいという宮津夫妻の信念は、今後も揺らぐことはない。