ニンジン作戦は本当によく効く

では、私の場合、コロナ禍の遠距離介護はどうしていたかというと、母が自宅にいるときは、とにかく毎日電話をするようにしていました。介護施設に入っているときはスタッフの方に協力してもらってLINEによるビデオ通話で面会です。

母は介護施設で用意したタブレット端末で顔を見ながら話すわけです。これは介護施設側の都合もあって毎日というわけにはいきません。私の場合は1週間に一度か二度の利用でした。

『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(著:柴田理恵/祥伝社)

2021年の春、母が腎臓の数値が悪化して入院、その後、介護施設のロングショートステイになったときもそうでした。

母は社交的なので、病院や介護施設でも「同じ町の人たちがいるから楽しいよ」と言います。介護施設にいたらいたで楽しむ術(すべ)を持っている。

でも一方で、「早く家に帰りたい」と本音もこぼします。

私は母の性格をよく知っているので、そんなときは「またお酒が飲めるように頑張ろう」とか「みんなを元気づけてね」とか、母の好きそうなことを言葉にして励まします。

母は何かしら目標があると張り切って元気になる。私のできる親孝行といえば、そのくらいのものです。

このときは、たまたま96歳になる母の姉も同じ介護施設に入っていたので、「しばらくの間、お姉さんがいるところで過ごして、元気づけてあげてね」と、とびきり重大な使命を頼みました。

しばらく介護施設でお世話になったあと、母は無事に自宅に帰ることができました。ニンジン作戦(母の治りたい気持ちを刺激する作戦)は本当によく効くのです。