「実は服を全然着替えないんです」

たとえば、こんなことがありました。

あるとき、ケアマネジャーさんに電話をして、「母に何か変わったことはありませんか」と聞いたところ、「実は服を全然着替えないんです」と言われ、驚きました。母はとてもきれい好きでしたから、にわかには信じられない話だったのです。

密にコミュニケーションを取ることで、問題の解決につながったり、逆に問題を未然に防いだりすることが可能になる(写真:本社写真部)

それはおかしいと思い、早速、母に理由を尋ねたところ、「よっちゃんに悪いから」と言います。よっちゃんというのはヒトシ君の奥さんで、そのヒトシ君によっちゃんを紹介したのは母でした。

母はよっちゃんが、二人の子どもを育てながら、自分の洗濯物まで引き受けて洗ってくれているのを知っていました。それが申し訳なくて仕方がなかったのです。だから、洗濯物が出ないように着替えるのをやめてしまった。

一方で、母が着替えをしなくなったと知ったよっちゃんは、「私の洗濯の仕方が気に食わないから洗濯物を出してくれないんじゃないか」とひどく気にしていました。

そこで私は、「よっちゃんが自分のせいで着替えるのをやめたんじゃないかと落ち込んでたよ。変に気兼ねしないで洗濯物を出したら?」と母に伝えました。それを聞いた母は、以後、ちゃんと着替えをするようになりました。

介護の現場では、ケアマネジャーさんなど介護をしてくださる側が踏み込めなかったり、介護される側も彼らに言いづらかったりすることがよくあります。そんなときは第三者が間に入ることで、案外、物事はうまく運ぶものです。このケースはまさにそうでした。