朝田先生「いったん気づいたのにまた同じものを買ってきてしまうのが認知症グレーゾーンの特徴」(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が公開している「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」によると、MCIといわれる認知症になる前の段階であれば、対策を行うことで健常な状態に戻る可能性があるそうです。認知症専門医の朝田隆先生は、このMCIについて「正常な脳と認知症の間に位置する、いうなれば“認知症グレーゾーン”」の状態だと言います。朝田先生によると、「いったん気づいたのにまた同じものを買ってきてしまうのが認知症グレーゾーンの特徴」だそうで――。

「同じものを買ってしまう」のもたまになら単なる老化の範囲内

「昨日、マヨネーズを買ってきて冷蔵庫を開けたら、未開封のマヨネーズがすでにあってびっくり。私ったらうっかり忘れて、もう本当にボケてるわ」

そんなサザエさんのような失敗談は、年齢とともに増えていきます。けれども、Iさん(62歳・女性)の場合は、ちょっと違っていました。

一人暮らしのIさんは、仕事帰りに買い物をして帰宅し、冷蔵庫を開けたところ、卵の10個入りパックが3つも入っていたのです。

「なんでこんなに……」と絶句したものの、「まあ、必要なものだからいいか」と思い直したIさんでしたが、なんとその翌日に、またもや卵の10個入りパックを買ってきてしまったのでした。

このように、同じものを買うことが「たまにある」のは老化現象ですが、いったん気づいたのにまた同じものを買ってきてしまうのが認知症グレーゾーンの特徴です。

記憶をつかさどる海馬の働きが弱くなった結果、つい最近の出来事を覚えておくのが苦手になってしまうのです。