朝ドラ執筆は「100mダッシュを130回」

作劇上の技術に関して少しご説明すると、『らんまん』では、登場人物同士の関係性の変化を書き続けました。それを繰り返していくことで、登場人物の微妙な変化や本音がだんだん浮き彫りになっていく。1話15分のコンテンツを毎日積み重ねていくことが、朝ドラという枠の最大の面白さだなと思いました。

全体としては、15分を130回。始まる前に、「130回というのは長距離マラソンではなく、100mダッシュを130回やる感覚だ」と聞いていましたが、やってみて、まさにその通りだと実感しました。

今は視聴者が放送直後にSNSで感想を共有することも含めて楽しんでいらっしゃいます。楽しみに待っている視聴者のことを考えると、1回ごとの完成度を下げるわけにはいきません。

長丁場ですので、体調管理のためにも規則正しい生活を心掛けました。朝はまずNHK BSでの放送開始時刻の7時半に間に合うように起きて、そのまま8時からのNHK総合も見ます。続けて『あさイチ』を見ながら朝ごはんを食べた後、犬の散歩。

10時くらいから仕事を始め、昼休憩をはさんで再び仕事に戻り、4時になると犬が「散歩の時間ですよ」と言いに来るので、夕方の散歩に出かけます。戻ってくると、もうそれまでの集中には戻れないので、後は原稿の校正をしたり、晩ごはんの準備をしたり。

夜は、マンガでも小説でもなんでもいいけれど、物語を摂取しないと眠りにつけないんです。仕事が大きくなればなるほど《物語》という食料が必要になるので、どうしても寝るのが2時、3時になってしまいます。

そんな毎日ですが、犬のおかげでお日様を浴び、健やかに過ごすことができました。

<後編につづく