スクラップ&ビルド
声優業界が芸能界化することに対しての抵抗感は強いのですが、「もしかしてこれは流れをせき止めない方が正解なのでは?」と考えてしまうこともあります。
たとえば人気タレントのギャラは声優の相場と違うので、そういった流れが声優業界に食い込んでくることで、タレントのギャランティーの相場に合わせて、声優のギャランティーも底上げされるかもしれません。逆に淘汰(とうた)されてしまう可能性もあります。
アニメの制作費やそこから支払われるアニメーターのギャランティーが低いことも度々話題になりますが、そこに資本力のある企業が乗り出すなど、外圧によって、伸び盛りの業界は一気に変革される可能性もあります。
スクラップ&ビルドですね。こうした動きは日本のアニメがメジャー産業になったからこそです。
もしそのような流れが加速したら、一気に業界の構造が良くなるのかもしれない。でもそれは劇薬的な処方で、様々な副作用が考えられます。
芸能事務所に所属できるようなタイプの声優だけが、大手に拾われて生き延び、ほかの大多数の声優が滅(ほろ)びてしまうような可能性もあるわけです。声優事務所が芸能事務所に吸収されてしまうかもしれない。
そこに残った声優業界は、本当に僕たちが望む姿をしているのだろうか……こうした危機感も、意識しておくことは大切でしょう。
※本稿は、『アイドル声優の何が悪いのか? アイドル声優マネジメント』(星海社)の一部を再編集したものです。
『アイドル声優の何が悪いのか? アイドル声優マネジメント』(著:たかみゆきひさ/星海社)
アイドル声優という観点からこれからの声優業界に必要なことに迫ります。
声優志望の方、声優を支えたい方、目指すべき声優像と声優業界の姿を僕と一緒に探りましょう!