あの世にお金は持っていけませんから
老後に向けた中高年の関心といえば、お金の問題は大きいですね。私自身は、ブレイク前もショーの司会や漫談で指名してくださるお客さまがいたので、お金にはさほど困りませんでした。
ただ会社勤めとは違い、定期的にお金が入ってくるわけではなく、先の保証もゼロ。お声がかからなくなったら終わりです。もしもの場合に備え、司会業の合間に専門学校に通い、マッサージ師の資格を取ったりもしました。
今も浮草稼業ですから、金銭感覚は昔と変わらず、無駄遣いはできません。車は1台あればいい。骨董品は好きですが、集めるのは昔の生活雑器ばかりで、たいしたものはありません。それも「断捨離」している途中で、友人知人が「いいなあ」と言えば差し上げています。
お金はあるに越したことはないでしょうが、あの世に持っていけるわけでもありません。「生きているうちに使いきり、死ぬときはゼロ」が理想。ですが、そうそう帳尻を合わせられるわけでもなく、また、なければないで不安ですよね。
私のファンの方々は、わざわざチケットを買ってライブに足を運んでくださる。年金からチケット代を捻出している方もいらっしゃるでしょう。私の役割は、そうした方に、いっときでも、笑いと「来てよかった」と思える幸せな時間を提供することです。
今の中高年は、子どもや孫たちとも離れて夫婦だけ、あるいは単身暮らしも多く、普段、思いきり笑う場面が少ないのではないでしょうか。だからお金を払ってでも、私の漫談を聴きにいらっしゃる。
そうして、きみまろを目の前で見て、ゲラゲラ笑わせてほしいし、できれば漫談の中で自分をイジってもらいたい。私がイジったお客さまから「冗談だし、しかたないわね」と言われると、「いや、私、冗談は言えないのですよ」と返す。そこで、わっはっはと、また笑いが起きる。
そんなみなさんに、また精いっぱい応えたいと、私自身、お客さまから活力と生きがいをいただいています。たとえ帰り道に、「今夜のごはん、何にしようかしら」と考えて、すっかり私のことを忘れてしまったとしても……。