今の時代に報道番組の司会者なんぞをやっていなくてよかったとつくづく思う。
「では専門家に伺います。そこにはエビデントがあるんですか?」とか、「クライスラーが起こった模様です」とか、「PTA検査の結果についてですが」とか、私のことだから、きっとそんな初歩的な言い間違えを何度もしていたにちがいない。
先日、私より少し歳上の社長さんが秘書嬢と話をしていらしたのを横で聞いていたら、
「へえ、連休に子供を連れてUFJに行くの? そりゃ混んでるだろうなあ」
連休はそんなに銀行が混むのかと思ったら、すかさず秘書嬢、
「社長、違います。USJですから」
笑って否定した。私も笑った。でも頭の片隅で「他人事ではない」と囁く声がした。
私の子供時代、三文字アルファベット略語ですらすら口から出てきたのは、DDTとPPMとPTAくらいだろう。他に何があったっけ? GDPとかBBCとか。NPOとNGOはどう違うんでしたっけ?
NTTは早めに馴染んだ感はある。でもDDIが出てきた頃からついていくのがつらくなった。まして携帯電話が出現し始めると、さらに困惑した。まずiPhoneとスマートフォンの違いがわからない。そう告白したら、清水ミチコ嬢に呆れられたことがある。
「同じものでしょ。スマートフォンは全体のこと。その中の一種類がiPhoneなの!」
そう言われてもなお解せない顔をしていた私にミッチャンは、幼児に言い聞かせるかのごとき口調で、
「スマホが果物。わかる? で、iPhoneはバナナなわけ」
もっとわからなくなった。