神のみぞ知る
以前、自宅に集金に来た業者さんと、「払った、払っていない」でトラブルになったときも、事の真相を確かめるべく割って入った私に向かって、
「お前は関係ないんだから引っ込んでろ!」
目をつり上げて食って掛かってきたくらい気が強い人だ。
預貯金の管理を長男である兄に任せ、必要なときだけ下ろしてきてもらっている老父とは対照的に、老母は通帳も印鑑も、もちろん財布も、私たちには一切触らせようとはせず、這ってでも近くのATMに自分でお金を下ろしに行く。
これからさらに老いが進み、外出が困難になったとき、施設に入るようなことになったとき。この人は、私たちに通帳と印鑑を渡すのだろうか……。
まさに神のみぞ知る。
まあ、居候の私が心配することではないんですけどね。
※本稿は、『寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ』(WAVE出版)の一部を再編集したものです。
『寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ』(著:こかじさら/WAVE出版)
故郷にUターン移住した先に待っていたのは、92歳の老父と90歳の老母、そして子どものいない88歳の叔父叔母夫婦との何ともやっかいな生活。わがまま、逆ギレ、能天気、人任せ……四者四様の様相を呈して立ちはだかる4人に、「これは修行か! はたまた罰ゲームか!」顔を歪めながらも奮闘する日々。
「私のほうが先に死んでまうやろ!」
常識も理屈も通用しない高齢者4人を世話する日々を描いたむき出しの介護エッセイ。