こかじさんは数年前まで両親の状態について、「深刻に考えてはいなかった」そうで――(写真提供:Photo AC)
2020年に総務省が公開したレポートによると、遺品整理にかかる見積もり金額で多いのは10~40万円の間の取引だそう。いつかはやってくる遺品整理に不安を感じている方もいらっしゃることでしょう。そのようななか、平均年齢90歳、父母と叔父叔母の4人の介護をするフリーライターのこかじさらさんは、「とっとと逝ってくれ、と毎日のように思っています」と話します。そのこかじさんは数年前まで両親の状態について、「深刻に考えてはいなかった」そうで――。

他人事だった介護がついに自分事に!

「ここ最近、親父とお袋がくだらないことで言い争いをして。そのたびに電話が掛かってくるんだから、もうやってられないよ」

「お袋の奴、ちょっと気に入らないことがあると、タクシーを1時間も飛ばして家出するんだけど。迎えに行くこっちの身にもなってほしいよ。俺だって遊んでるわけじゃないんだからさ」

老父母が80代に突入するかしないかの頃だったと思う。東京で会社勤めをしていた私のところに、実家から5分ほどのところに住む自営業の兄からウンザリした様子で頻繁に電話が掛かってくるようになった。

すでにこの頃、老父母共に認知症の初期症状が表れていたのだろうが、元々短気で神経質な父と何でも自分の思い通りにならないと気が済まないほど我の強い母故、くだらない夫婦げんかは日常茶飯事。

「放っておけばいいんじゃない」

対岸の火事よろしく、深刻に考えてはいなかった。

だがしかし、5年ほど前、そうは言っていられない事態に襲われ現実を直視せざるを得なくなる。