買い物を私に任せるわけがない

しかも、何があって何がないのか、本当に必要かどうか、消費期限が迫っているものはないかなどの管理がすでにできなくなって久しい90歳。

縁日に出掛けた子どものような勢いで欲求の赴くままに買ってくるのだから、水が出てベチャベチャになった青菜やもやしなどの野菜類、とっくのとうに賞味期限の切れたベーコンや練り物、カビの生えた佃煮や漬物、さらには数年前の日付の冷凍食品などで我が家の冷蔵庫は常に溢れかえっている。

『寿命が尽きるか、金が尽きるか、それが問題だ』(著:こかじさら/WAVE出版)

だったら、あなたが代わりに買い物へ行き食材の管理をすればいいではないか。と思う人もいるだろうが、それこそ高齢者と同居したことのない人が言う台詞である。それができれば誰も苦労はしない。

「スーパーの揚げ物は、おかあさんしか食べないのに、何でこんなにたくさんの唐揚げや天ぷらを買ってきちゃうの?」

「食べる量を考えずに買ってくるから、いつも腐らせちゃうんだよ」

「食べたかったら、2個入りとか3個入りとか、自分が食べる分だけ買ってくればいいでしょ。少量パックのものも売ってるんだから」

毎日のようにこうしたやり取りが繰り返されてはいるが、

「居候のくせに、親の私がやることにいちいち口出しするんじゃないよ」

実の娘に向かって真顔で居候と言い放つような人が、買い物を私に任せるわけがない。