大量のファンレター
ある時、寮長さんがパンパンに膨らんだ紙袋を2、3個抱えて病院まで来てくださいました。
「ファンレターがあんまりたくさん届くんで、たまりかねて持ってきましたわ」
そう言って紙袋から取り出したのは、大量のお手紙やお見舞いの品々でした。
「慎太郎、ファンの皆さんから手紙届いたよ!」
「え……」
慎太郎のベッドに手紙の束をのせて手で触らせてやると、その数に驚いたようでした。
「こんなに……?」
私はベッドサイドに腰掛け、最初の一通の封を切りました。
『一日も早い復帰を祈っています』
私は丁寧に書かれた手紙の一言一句を音読していきました。一通目を読み終わると、次の一通を開封しました。
『どんな状態か分からないけれど、横田さんが帰ってくるのをいつまでも待っています』
一通一通、開いては閉じ、開いては閉じ、声に出して読んでいくうち、胸にこみ上げるものがありました。
手紙のほとんどが手書きで、小さなお子さんから若い女性、ご年配の男性、主婦、高校球児に至るまで様々な年齢層の方々が心を込めて書いてくださっているのが伝わりました。
その文面から、込められた慎太郎への想いや願いがひしひしと伝わってきました。慎太郎の似顔絵を描いてくださる人や、千羽鶴を折ってくださる人もいました。
なんと息子は愛されているのだろう。こんなに多くの方から応援されているのだろうと、胸が熱くなっていきました。
時が経つのも忘れて読み続け、ふと顔を上げますと、目を閉じてじっと聞いていた慎太郎の目からは、静かに涙が流れていました。
「慎太郎」
手を止めて、そっと慎太郎の手を握ってやりますと、涙はあとからあとから流れて頬を伝い、ベッドの布団の上にぽたぽたと落ちていきました。傷だらけで、顔も青白く、次第に痩せ始めている体をさすりながら「良かったね」と繰り返しました。
一日では読み切れない量の手紙を何日もかけて読み、しばらくするとまた寮長さんが新しく届いたものを持ってきてくださる……そんなことが繰り返されました。