(写真提供:Les Ballets Eloelle/Grandiva)

笑えて泣ける奇跡のグランディーバ・バレエ団

私がまだ小学生くらいの頃、テレビでトロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団のヴィクター・トレビノさんというバレリーナの方がテレビに出ているのを見て、そのあまりの妖艶さに目が釘付けになりました。その彼が後に、今回来日するバレエ団“グランディーバ・バレエ団”を立ち上げます。グランディーバ・バレエ団の公演は本格的なバレエの演目ばかりですが、バレリーナは全員男性、随所に笑いのツボが散りばめられています。この度は、私が応援団としてそこに名を連ねることができることになるなんて、本当に光栄な運命です!

バレエと笑いは本来かけ離れたはずのものですけれど、これが見事に融合しているのがこのバレエ団。グランディーバは世界中で公演して、理解されない部分が削ぎ落とされ、アップデートを繰り返しているので、笑いのレベルが毎回パワーアップしていくんです。

グランディーバでは、本来男性は履くことのないトーシューズを履いて踊ります。トーシューズはつま先だけで全身を支えるので、骨の重い男性が自分の体重を支えるのは骨折の危険があって、すごく難しい。グランディーバの団員は怪我をしないためにも1時間バーレッスンをしてから本番に臨んでいるんです。私、バレエを習ったことがあって、バーレッスンの大変さを知っているのでびっくり。本番前に、わざわざ体力を消耗するバーレッスンをするの?!と本当に驚きました。

女性役の方のチュチュドレスの華奢な紐の下からは、すごく鍛え抜かれた肩甲骨を拝むことができます。そんな彼らが瀕死の白鳥を表現するんですけど、これがすごく切なさをそそるんです。表情や動きで笑わせた後なので、辛さを引き出されると、緊張と緩和がすごくて、ワっと涙が溢れてきてしまう。

私は14歳の時からショーの世界に入っています。当時は宝塚の生徒に教える先生にジャズダンスを習っていたのですが、その方が「バレエが踊りの基礎になるから習いに行きなさい」とアドバイスをくださいました。バレエで鍛えた背中は本当に素晴らしいです。背中に筋肉がある人はいつまでも老けないし、品が違って見えます。バレエをずっと習って、舞台を見てきた私の目にも、グランディーバのダンサーは超一流の方ばかり。本物を見ると同時に笑うこともできる舞台は最高に贅沢です。

そして嬉しいことに、グランディーバの方は大の親日家。日本はバレエ人口も多いし、お客さんがとにかく優しくて温かく迎えてくれると彼らは語ってくれました。私も舞台に立つ側の人間として分かるのですが、お笑いという要素があると、ウケなかった時、焦るんですよね。笑い声が少ないと色々変えてみたりして、結局うまくいかなくなることも多い。舞台は生物。私は気に入った舞台を何回も見ます。そうすると分かるのですが、同じ演出家、脚本、演者の舞台であっても別の日には全く違う舞台になるんです。やっぱりお客さんの反応がいいと、最高のパフォーマンスができるものなんですよね。

「舞台は生物。気に入った舞台を何回も見ます。同じ演出家、脚本、演者の舞台であっても別の日には全く違う舞台になるんです」(本社◎奥西義和)