「何か、我々に訊きたいことがあるということでしょうか?」
藤堂が言った。控えめな口調だ。
阿岐本が言った。
「今年の駒吉神社の縁日では、町内会の方々が露店を出されるのだそうですね」
藤堂が不安そうにうなずいた。
「そうです」
「長年、商売をしてきた露天商を、入れないことにしたんですね」
「我々が締め出したわけではありません。彼らを入れないことに決めたのは、駒吉神社です」
「神主の大木さんは、これまで露天商を入れられるように努力されていたようですがね……」
河合が言った。
「誰からそんなことを聞いたんだ?」
どうやら、この人物が一番反抗的なようだ。阿岐本に対して敵意をむき出しにしている。虚勢を張っているのだろうと、日村は思った。つまり、怖いから吠えているのだ。
阿岐本は充分にそれを承知しているから余裕の表情だ。
「大木さんご本人から聞きました。そして、露天商側の人からも……」
すると、山科が言った。
「露天商側の人……。それはいったい何者です?」
阿岐本はこたえた。
「多嘉原という人で、神農系団体の代表です」
「つまり、テキヤの親分ということですね?」
阿岐本は素直に認めた。
「はい、そうです」
河合が眼の色を変える。
「やっぱり、テキヤを排除したことについて、圧力をかけに来たんだな」
田代がなだめようとするが聞かない。
「警察を呼ぼう」
河合が電話を取り出した。