そうでなくちゃ困る

そんな話を30代半ばの女性にしたら、彼女は現時点ですでに体調不良の日ばかりだと言う。低気圧の日は必ず頭痛が襲ってくるし、生理の日はかなりしんどい。それでもフルタイムで働いているというのだから、頭が下がる。

最近は「フェムテック」という言葉をよく耳にする。英語のFemale(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語で、女性が抱える健康上の問題を、テクノロジーで解決するサービスや製品を指す。

それはいいのだが、どうやらフェムテックは「産業」らしいのだ。経済産業省にもフェムテックのサイトがあって、「人に話すことをタブーとされた女性の健康やライフイベントに関わる悩みをひとりで我慢せずに“みんな”で共有し、助け合う『新しい当たり前』をつくるムーブメントにもなっています」とも書いてある。素晴らしい。素晴らしいが、「産業」なのがどうしても引っかかる。

産業を「デジタル大辞泉」で引いてみると、「生活に必要な物的財貨および用役を生産する活動」とあった。つまり、国がどれほど産業をサポートしようとも、その活動に対価を払う人が必要なのだ。当然、それは女になる。企業が福利厚生的に取り入れることもあるだろうが、そんなのは大企業だけだ。

フェムテック産業は2025年には5.5兆円規模の市場になるらしい。市場かあ、とため息が出る。女が健康でいられる日が増えることは喜ばしい。だが、なぜ厚生労働省管轄ではないのか。美容整形を保険適用内にしろと言っているのではない。女性なら誰しも陥る可能性がある不調の解決が、金次第になるのはいかがなものかと言っているのだ。

あと5年もすれば、男の更年期も産業としてターゲットになるだろう。それまでに、男女の給与格差が縮んでいることを願う。どっちも産業にするなら、そうでなくちゃ困る。産業が拡大すれば、医療が連動してくる場面もあるだろう。そうでなくちゃ困る。


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年齢を重ねただけで、誰もがしなやかな大人の女になれるわけじゃない。思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」……疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇