生まれつきの個性

この分解の度合いが低いタイプの女性の脳は、幸福を感じやすい脳といわれ、生まれつき幸福感が高いとされています。なかでもとくに低いタイプの人は、幸福感が高いと同時に、援助交際のような反社会的行動をとりやすいともいわれています。

幸福感が高いのに反社会的行動を起こしやすいというのは、一見矛盾しているように感じるかもしれません。モノアミン酸化酵素の分解の度合いが低いということは、セロトニンの分泌量が多いということ。セロトニンが多いと安心感、安定感を抱けるため、その反対である不安感がないのです。不安感は先を見通す力、将来を考える力があるからこそ芽生えます。

『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(著:中野信子/サンマーク出版)

逆にいうと、先のことを考えていないからこそ不安感ももたない。つまり、セロトニンの分泌量が多すぎると、先のことを考えないから、「いまがよければいい」といったような反社会的行動をとりやすくなるのです。

また男性の場合は、モノアミン酸化酵素の分解の度合いが低いと攻撃的なタイプになるといわれています。

たとえばこのように、私たちの脳は、自分では如何(いかん)ともしがたい生まれつきの個性をもっているのです。

この個性は、「私は先のことをあまり考えないタイプだ。だからあえて一日一回は真剣に考えるようにしよう」などと、自分の脳の特徴を自覚することで、その特性の発揮をある程度抑えることはできます。しかし脳の個性をガラリと変えることはできません。