こまつ座の太宰に身震い
このたび僕は、こまつ座の舞台『人間合格』(井上ひさし・作)で太宰治を演じることになりました。『人間合格』は何度も再演されている名作舞台で、太宰役を務めてきたのは風間杜夫さん、渡辺いっけいさんをはじめ、そうそうたる面々。最初は「完全にミスチョイスじゃ……」と不安になりました(笑)。でもキャスティングしていただいたからには、終わった時に「期待以上だった」と言われるよう、しっかりと準備していきたい。
伝統ある劇団の舞台ということでの緊張感はもちろんあります。正直「こまつ座」とか「作・井上ひさし」と聞くだけで、身震いするようなところがあります。おそらく目の肥えた方がたくさん観にきてくださると思うので、いつも以上にエネルギーを持って臨まなくては。
太宰治というと、真っ先にイメージするのが、繰り返し自殺を図る情緒不安定さ。そういう部分が書くことにつながったのでしょう。でも過去に上演された『人間合格』の舞台映像を観ると、彼の生きざまはとても優しく描かれている。「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに 書くこと」という井上さんの言葉がありますが、まさしくその通りだなと思いました。それに、太宰治という人は、ものすごい色気がある人で、とにかく女性にモテる。そんな男を演じるのは、ものすごいプレッシャーです。(笑)
今回演じるに当たって、何か自分ならではの新しい解釈を打ち出していけたらいいなとは思っていますが、そこは演出の鵜山仁さんをはじめ、スタッフや共演者とディスカッションしながらつめていきたい。
過去に太宰作品で読んだのは『ヴィヨンの妻』『人間失格』『女生徒』くらいなので、まずは著書を読むところから始めてみようかと。すでに一気買いして、舞台稽古が始まるまでに1冊1冊読んでいこうと思っています。