我が家は、蔵書はおろか本棚もない家でした。両親ともアマチュアながら絵を描く人だったので(姉も絵を描くほうなので家族に字書きは私ひとりです)、画集だけが揃っていました。
単行本に両親はいい顔をしないんです。本は文庫になってから買うもの、という意識を私は強く植えつけられて育ちました。大人になってからも単行本の所持は両親の手前やはり後ろめたかった。それが電子書籍を使いはじめてからは、何を買おうが見咎められずにすむので、最近はやっと躊躇なく単行本を買い漁れるようになりました。こんなことで電子書籍のメリットを感じているのは私だけかもしれません……。
そんなふうに文庫専門人間だった私は、赤川次郎の「三毛猫ホームズ」や、イーニッド・ブライトンの寄宿舎小説などを経て、小学5年でコバルト文庫に出会いました。
『ハンチバック』の主人公(私と同じ先天性ミオパチーという設定)は教室で意識を失ったと語ります。私が実際に意識を失った場所は病院のベッドの上でした。疲労が溜まっていると感じられたため検査入院をした、その翌日のことです。
病弱だった姉と比べると、私は筋力の弱さを除けば健康的で手のかからない子どもだったのに結局、姉妹で同じ経過を辿ることになったわけで、病院から電話がかかってきたとき母は泣いたそうです。先に在宅移行していた姉に続いて、それ以降私も人工呼吸器患者となって在宅療養に入りました。
外出がままならなくなり学校生活からドロップアウトした私は、俗世とは隔絶された家の中でひっそり本を読んで生きていました。インターネットが充実してくる2000年代半ばまでは買い物もすべて親頼みで、本やCDのタイトルを書いたリストを渡していました。