竹田さん「礼儀というものが人間関係をスムーズにするために欠かせない作法の一つ」(写真提供:Photo AC)
2020年に文化庁が1,500人に対して行った国民意識調査によると、茶道を経験したことがない人は全体の約6.5割だそうです。そんな茶道を、日本だけでなく世界にも広めようと活動しているのが、茶道家(裏千家教授)の竹田理絵さん。今回は、茶道にまつわる教養を紹介していただきました。その竹田さんは、「礼儀というものは人間関係をスムーズにするために欠かせない作法の一つ」と言っていて――。

礼に始まり、礼に終わる

茶道というと、作法やお茶の飲み方に目が行きがちですが、最も大切なのは、お茶を点ててもてなす亭主とお客様とのコミュニケーションです。

それは、茶道から生まれた「一期一会」、つまり「どのお茶会も生涯に一度しかない出会いであると心得、主客共に誠意を尽くすべきである」という言葉からもお分かり頂けると思います。

自分をさらに高める教養
「一座建立(いちざこんりゅう)」とは「亭主がもてなすだけではなく、お客様もこれに応えて、主客一体となって場を創り上げるものである」という茶道の真髄を表した言葉です。

茶道の根底にはこれらの心構えや考えがあり、その思いを表現するために作法があります。

それでは、お茶の世界では実際にどのようにして良好な人間関係を作り、保っているのでしょうか。日常生活にも応用できるかと思います。

まずお茶会を開く際、亭主は何日も前からお客様のことを想い、趣向を考え、丁寧に茶室周辺を掃除して、心地よい「場」を作ります。

お客側も、亭主や一緒に過ごす他のお客のことを考え、相応(ふさわ)しい服装などで、周りを気遣います。

「茶道は礼に始まり、礼に終わる」と言われるように、亭主とお客同士がお互いを思いやり、気遣うことで礼儀作法を大切にしています。

これは、礼儀というものが人間関係をスムーズにするために欠かせない作法の一つだからです。

例えば、お茶会では茶席に入る前、お菓子やお抹茶をお出しする時など、お互いにお辞儀をする場面が多くあります。

それは、お辞儀によって相手を敬う気持ちや感謝の心を伝えているからです。

お客様同士も、先にお菓子やお茶を頂く人が後の人に「お先に」と心遣いの挨拶をします。