似合う色、似合わない色を気にしない

こうして詳しく紐解いてみると、「似合う色・似合わない色」の線引きというのは、本当に曖昧なものだということがおわかりいただけたのではないでしょうか?

また、「似合わない色」はファッション的には存在しない、と私は思っています

というのも、繰り返しになりますが、カラー診断は「首の真下にある色が顔に映り込むことで、顔色に影響を与える」という原理に基づいて、肌映りの良し悪しを判断しているに過ぎないからです。服、髪色、メイク、小物など、ファッション全体をコーディネートすることで、印象はいかようにでも変えられます。

また「この色は似合う、似合わない」と感じる理由には、単に「慣れ」もあります。普段着ない色を試すと「わっ、やっぱりこんな色似合わない!」と思いがちですが、それは自分が普段身につけない色なので、見慣れないことから起こる違和感です。

特に日本では、学生服やスーツなど固定の色を着続けることが多いので、ビビッドピンクや赤などの華やかな色を着ることに慣れていない方がとても多いと思います。

日本でずっとネイビーの学生服を着て育ってきた女の子が、突然アメリカの西海岸に転校することになって、急にバービーのようにビビッドな色の服に囲まれたら「えっ、私がこんな色の服を着るの?」と最初は戸惑うでしょう。それでも、慣れてくれば、そうした色を自然と着られるようになるはずです。

ですから、これまで服を見ると条件反射的に「無難そうな色」を選んでしまっていた方は、「惹かれた色なら自由に着ていい」と、自分にOKを出してあげてください。「縛り」がひとつ外れて、服選びの幅が広がり、とても楽しくなっていくはずです。

ちなみに「色選びが苦手だから、いつもモノトーン」という方もいますが、じつは白と黒はなかなか手ごわい色です。

白という色はコットン100%は純朴、清純、シルクは上品、艶やか、ニットは甘い、柔らかなというように、素材のもつ特性がストレートに「服の言葉」としてイメージに繋がります。

一方の黒は、服の「質」がハッキリ出ます。スタイリッシュに見えるか、華やかに見えるか、陰気に見えるかは、すべて素材の良し悪しにかかってくるので要注意です。

モノトーンを着るときは、素材やデザインのもつ言葉に耳を傾けて、「自分のなりたい印象を言葉に持つ服」を選んでくださいね。

 

※本稿は、『「センスがいい人」だけが知っていること』(青春出版社)の一部を再編集したものです。


「センスがいい人」だけが知っていること』(著:しぎはらひろ子/青春出版社)

洋服はたくさん持っているのに、着たい服がない。そもそもおしゃれに自信がない。自分に何が似合うのかわからない。そんな悩みが生まれてしまうのは、「ファッションの仕組み」を知らないから。ファッションにも理論や仕組みがあり、それを知るだけで簡単に「センスのいい着こなし」ができます。

ベストドレッサー賞審査員をつとめ、これまでに8万人以上のスタイリスト、アパレル販売員など、ファッションのプロを育成してきた「服飾学」の第一人者が、時代にもトレンドにも踊らされずに自分の洋服を選ぶ方法をお伝えします。