さて、あたしたちは、子連れOKかどうかという問題に直面した。トモコさんとサエさんは子持ちである。その友人たち、あたしに興味を持ってくれるような日系の女たちもまた子持ち世代。そして公演は土曜日のまっ昼間、大学のホールで行われる。子どもにとってはいちばんたいへんな時間帯である。
昨夏のベルリン滞在時には、トモコさんが講演会を企画してくれて、ライブの人生相談「比呂美庵」の海外版をやった。それは子どももOKだった。
ここにかぎらず、あたしはたいてい子どもOKでやってきた。でないと日本では女が外に出てこられないからだ。でも今回は主催者の大学側に、子どもはダメと言われた。いわく「ファミリー企画じゃないんだから、こういう公演には子どもは連れてこないのが当然である、子どもが騒いだら、見たい人の権利も侵されてしまうから」と。
「えー、別にいいんじゃないの」とユウコさんは言うし、トモコさんサエさんは残念がるし、あたしも悶々として、みんなで話し合ったが、結局、内容があまりにエグいので、親から苦情が来るかもしれないという別の可能性に気がついて、子どもはご遠慮願いますというところに落ち着いた。
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米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。
週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。一人の暮らしの自由と寂寥、60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための〈言葉の道しるべ〉。