悩む時間は脳がくれた「選択の時間」

ひどく難しい選択を迫られた経験があるでしょうか。どちらを選ぶかでその後の人生に長く影響があるような選択です。その時、どんな気分でしたか?

そんな時は引きこもり、誰とも会いたくなくなる人が多いようです。何週間も何カ月も、独りでうろうろ歩き回っては(あるいは頭から布団をかぶって)悩み続ける人もいます。友人も「どこか悪いの?」「うつにでもなってしまったの?」と心配し始めます。

その通りなのかもしれません。難しい決定に悩み、なかなか決められないでいるとうつになることがあります。無気力に悩み続けることはあまり良くない場合があるのです。

しかしこれも、脳がゆっくり悩む時間を与えてくれているとも考えられます。邪魔されることなくあらゆる選択肢を比較出来るようにです。

ある実験で、子供たちに楽しくなる動画や音楽、別の子供たちには悲しくなる動画や音楽を観せたり聴かせたりしました。そのあとに、絵の中からできるだけ早くパターンを見つけるテストをさせます。

そのテストは細かい点に注目する能力を必要とするのですが、楽しんでいる子供と悲しんでいる子供のどちらが成績優秀だったでしょうか。そう、悲しんでいる子供の方です。

どういう思考能力が必要とされるかは時と場合によります。難しい選択をする際には選択肢を何度も検討して、批判的な視点を持ち、細かい点にも目を配るような問題解決力が求められるため、気分も落ち込みがちです。

一方で、広い視点から考え、リスクを冒してでも前に進んだ方が良い場合もあり、それができるのはたいてい気分の良い時です。

気分の良い時には粗探しをするのをやめてしまうからかもしれません。「何もかも完璧なんだから、問題を探したり細かい点までつついたりする必要なんかないでしょう?」と。そのため、気分の良い時は騙されやすくもあるそうです。