気になるのは老化していく自分のこと

3年前に亡くした息子が夢に登場する、「川のほとり」という作品も収録しました。これは出版社たっての希望で『ジャックポット』にも収録しましたが、あくまで書いた順だと本作の1篇です。

評論家の蓮實重彦さんがラストシーンに泣いたとおっしゃっていましたが、こちらとしては悲しいから書いたわけではなく、悲しいことを書いて人が泣いたら「してやったり」。それが小説家ですよ。

「プレイバック」と表題作「カーテンコール」は、そろそろ掌篇小説も終わりかなと思い始めて書いた2篇。普通カーテンコールの後にプレイバックなんですが、こればっかりは書いた順だから仕方がない。

「プレイバック」では、『時をかける少女』の和子や「夢探偵」のパプリカなど、自作の人気キャラクターや、作家の小松左京、評論家の大伴昌司ら盟友たちを病床の私の見舞いに来させ、当時のエピソードを披露してもらいました。

「カーテンコール」は、映画スターたちとの座談会形式。昔観た映画のことですから、書きながら懐かしかったですよ。

「夢工房」や「塩昆布はまだか」など老いを題材にした作品も書きましたが、気になるのは老化していく自分のことです。70代で考えていた老いと、今現在、89歳で感じる老いとではまったく違いますね。最近は生きるか死ぬかの問題ですよ(笑)。