「海外での経験を通して身についたことのひとつに、《自己主張》があります。人に迷惑をかけないのが大前提ですが、相手に〈こうしたらいいのでは〉〈ここは間違っていると思う〉と意見を伝えることは、生きていくうえで重要なことだと改めて思うようになりました」(撮影:宅間國博)
端正な顔立ちとクールな演技でファンを魅了し続ける山下智久さん。3年前に独立して以来、海外への進出でも注目されている。新たな世界に飛び出した今、何を感じているのだろうか(撮影=宅間國博 構成=上田恵子)

言うべきことを言える人間に

2020年に個人事務所を立ち上げました。それからの数年間は、広い海に出て懸命に船を漕ぎ進むような時間でしたね。コロナ下ということで大変なこともありましたが、サポートしてくれるスタッフ、そして応援してくださる皆さんのおかげで、なんとかこうして航海を続けられています。今は舵の取り方を模索しながら、新しい景色を見せていただいている、という感じです。

最近は海外の映画やドラマへの出演が増え、日本を離れて仕事をする機会も多くなってきました。もちろん日本が一番居心地がいいのですが、外から眺めることで、日本と海外、それぞれのいいところとそうでないところも見えてきます。

たとえば日本は、あらゆることがものすごく正確に進行していきますよね。これは素晴らしいことである半面、その厳密さが自分の首を絞める場合もある気がして、もうちょっと緩めてもいいのかなあと思ったり。

一方、日本に比べて何事も大らかな海外では、電車が時間通りに来ないなど、大らかすぎて生活に支障が出ることも(笑)。そういう経験をするたびに、すべては表裏一体、長所と短所は同じところにあるんだなあと感じるようになりました。

想定外のことに出会うと焦るけれど、世の中の大半は自分の思い通りにはいかないもの。大切なのは、起きたことをどう受け止め、いかに楽しむか。心にゆとりを持ち、心の調整をすることで、物事への対応力をつけていくしかないのだと学びました。

海外での経験を通して身についたことのひとつに、《自己主張》があります。人に迷惑をかけないのが大前提ですが、相手に「こうしたらいいのでは」「ここは間違っていると思う」と意見を伝えることは、生きていくうえで重要なことだと改めて思うようになりました。

黙ってスルーするのではなく、言うべきときに言うべきことを言う。言うだけならタダですし、伝わらなければ話し合えばいいんですから。「僕はこう思うんですけど、どうですか?」と本音でディスカッションするほうが、相手との関係も深まりますよね。