運命共同体
同年代のマンガ家と編集者で一緒になって、「近くだからうちにおいでよ」なんて言って誘ったり、帰りに池袋まで一緒に出て、喫茶店で延々と喋ったりもしました。
そして「編集者にこう言われたけれど、どうしたらいいかしら」などと情報交換したものです。こうした、同じ立場の仲間とのお喋りに、どれほど励まされ、助けられたことか。
マンガを描くのはとにかく手間がかかるうえ、連載を複数持つのはなかなか大変なのです。だから夜中に眠くなったらマンガ家友だちに電話をして、喋りながら描いていました。長電話は年々多くなりましたね。相手も描きながら、あれこれ喋るのです。
だんだん仕事が安定してくると、今度はお互いに、同じ雑誌でネタがダブらないように、どういうことを描くか話し合ったりもしました。どんなものを描くか聞いて、かぶるなと思ったらやめて他のアイデアにしたり。同じ時期に同じ雑誌で描いているマンガ家は運命共同体なのです。
その雑誌が売れないと、みんなが困ってしまう。だから誰かが大ヒットを出してくれると、「うわ、よかった! しばらくこの雑誌持つな」と思うのです。
普段は、編集部から「頼むからヒットさせてよ」なんて怒られるのですが、何かの作品がヒットしていると、編集部もゆとりがあるから「好きな作品描いていいよ」となるのです。
雑誌ごとに編集方針はあるのだと思いますが、マンガ雑誌だとマンガの割合が大きいですから、編集部の決めたカラーよりも、個々の作品それぞれが面白いかどうかにかかってくるのです。
※本稿は、『漫画を描くー凛としたヒロインは美しい』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『漫画を描くー凛としたヒロインは美しい』(著:里中満智子/中央公論新社)
1960年代のデビュー以来、数々のヒット作を世に送り出してきたマンガ家・里中満智子。近年は自らの創作のみならず、日本マンガ界を牽引する立場としての活動も高く評価され、文化功労者にも選出された。
「すべてのマンガ文化を守りたい」との想いを胸に走り続けてきた75年の半生を自ら振り返り、幼少期から現代、そして未来への展望までを綴る。