先輩方が活き活きしている

私が人生で初めて焼肉を食べたのは、花村えい子先生、谷ゆき子先生と一緒でした。「今からご飯を食べるけど、一緒に行く?」と誘ってくださって。ドキドキしながら後をついて行きました。

邪魔だったんじゃないかしらと、今となっては思うのですが、食べながらいろいろとアドバイスをくださいました。

『漫画を描くー凛としたヒロインは美しい』(著:里中満智子/中央公論新社)

「あなたの場合、フキダシの形をもうちょっとこうしたほうがいい」なんて、実際に描きながら教えてくれるのです。「こうしたほうがスッキリするんじゃないかしら」「斜線をもうちょっと真面目に引いて」なんてもう、本当にいろいろ。

その上、支払いのときには「後輩に払わせるもんじゃないから」と奢ってくださるのです。「うわ! 私も早くこう言えるようになりたい」と勇気づけられました。

先輩方が活き活きしていると、すごくホッとしました。みなさん本当に身ぎれいにされていたので「ああ、マンガ家って苦しくて汚い職業じゃないんだ、よかった」って。

水野英子先生にもお会いしました。ちょうど「マーガレット」で『白いトロイカ』を連載されている頃でした。トキワ荘を出られて住んでいたご自宅にお邪魔して、原稿を脇から覗かせてもらったのです。

そこにアシスタントとして西谷祥子先生がいらしていました。「少女クラブ」で作品を読んでいましたから、驚きました。