ホームズをスランプに陥れる

ちょうどその時期にテレビドラマでもシリーズが放映されていたので、原作とドラマ両方で楽しんでいましたね。子どもの頃は、台詞を全部暗記するくらいドラマに釘付けになっていて、ホームズよりも僕が先に台詞を言ってしまうので親に嫌がられました。(笑)

だから、本作を執筆している最中も無意識でドラマの台詞が出てきてしまって。原作をベースに書いているので、そこはできるだけ削るように心がけました。

とはいえ、僕自身はシャーロキアンといえるほど詳しいわけでもないんです。なので、「ホームズが名探偵で、ワトソンが相棒」という点さえわかっていれば、十分楽しめる物語になっていると思います。

仕事場の本棚の自著コーナー(写真提供◎森見さん)

それにしても、「シャーロック・ホームズ」の固有名詞は本当に強いですよね。これまでもいろんな人がシャーロック・ホームズを物語に登場させてきたけれど、これだけいろんな描きかたをされてきた人はいないのではないでしょうか。

『シャーロック・ホームズの宇宙戦争』では、宇宙人と戦ったりもしていますしね。だから、僕がホームズをスランプに陥れたところで大問題になることもないし、怒られることもないだろう、と。(笑)

ホームズはキャラクターの自由度がすごく高いんですよ。だからこそ、今回はこういう思い切った設定で執筆することができました。