10年続くスランプと正面から向き合った

本作では、スランプに苦しむホームズが七転八倒する姿が如実に描かれている。森見さんご自身も、2011年頃スランプに陥り、当時抱えていた連載を中断して帰郷した経験を持つ。登場人物たちに反映させたご自身の想い、葛藤とは――。

僕はここ10年ぐらいずっとスランプで、苦しみながら悩みながら小説を書いてきました。なので、本作を書くにあたり、あれこれ困っている自分をスランプ中のホームズとワトソンに投影していた感覚があります。

この作品を書くことで、なんとかスランプから抜け出すことはできないだろうか、と。書きながら、“スランプとは何か”みたいなものを突き詰める感じです。

結果、スランプから抜け出す手がかりは掴んだと思うけど、その手がかりが正しいものかどうかは、まだわからない。それはこの先の仕事で証明していくしかないですよね。