患者からは分からないこと
こうした臨床研究(治験という)は、研究に参加してくれる患者がいて初めて成り立つ。ボランティアとも言える。ある意味で、患者に少なからず犠牲を強いる。そうまでして手に入れたエビデンスなのだから、医師はその結果を重く尊重すべきである。
小児科領域でも耳鼻科領域(特に中耳炎)でも、疾患ごとにガイドラインが世に出ている。こうしたガイドラインを、開業医はしっかりと押さえておかないといけない。
ところが、あんがい我流の治療を行っている医者がいる。どういうつもりなのか、ぼくにはよく理解できない。内科の先生や耳鼻科の先生が、子どもの診療を行うならば、そうしたガイドラインをしっかり守ってほしい。ぼくなんかガイドラインから外れた医療は怖くてできない。
患者の側からすると、医師がガイドラインを守っているかまず分からないだろう。そこはなかなか悩ましい問題だ。
ぼくは診察室の本棚にガイドラインや教科書を並べていて、患者家族から同意を得るときに、そうした本を広げて当該部分を読み上げて説明することがある。これは患者にとってどう映るのだろうか。
さすがに患者家族もネット情報よりも、医学書に書いてあることの方が正しいと思っているだろう。だから本を見せられて納得するかもしれない。しかし一方で、アンチョコを広げて診療をしている頼りない医師に見えるかもしれない。これは患者家族に聞いてみなければ分からない。