幸せを強く願いながらひと針ひと針縫って

しかも、ほかのママ友3人にも声をかけてくれて、さらに7着のオーダーが入った。小さな子ども用のシンプルなデザインの洋服なら、1着2、3時間で仕上げることができる。ママ友の情報網は広く、「お得意様」が12人に膨らんだそうだ。

つい数ヵ月前には、知り合いの娘が、自分で描いたイラスト持参でウェディングドレスをオーダー。「ご祝儀の気持ちも込めて、3万円でかまわない」と伝えたが、「一生の記念。これでも足りないくらい」と、10万円も置いていってくれた。

「その娘さんの披露宴に出席したお友達の間で、『オリジナルって最高! 10万円なら超安い!』と評判になったらしく、ウェディングドレスのオーダーが止まりません。私が結婚に失敗した分、幸せを強く願いながらひと針ひと針縫っています。それがまた、幸せなんですよ」

半年前、父親は逝去。「締め切りなしの仕立て屋」を続けながら、弁当屋と工場のパートにも復帰した。

「収入は月によりますが、だいたい20万円くらいでしょうか。子どもは自立したし、たとえ少なくても生活するには十分。洋裁が『仕事』になっているのが、何よりも嬉しいの」

 


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