世界遺産登録は「妙薬」ではない

ユネスコサイドの流れは4段階を踏んで進みます。

1、世界遺産に登録される、あるいは登録運動が起こる。
2、観光客が押し寄せて遺産をゆっくり味わえなくなる。
3、周辺に店や宿泊施設が乱立して景観がダメになる。
4、登録地の本来の価値が変質する。

そして、場合によっては最後にもう一つの段階が加わります。

5、一時、流行った後、客が急激に減り、観光を期待した町が苦戦する。

『観光亡国論』(著:アレックス・カー、清野由美 中公新書ラクレ)

日本では、ユネスコによる世界遺産登録を、地方を甦らせるための「万能の妙薬」のごとく、とかくありがたがる風潮があります。

しかし実際は、ユネスコによる世界遺産登録がうわさされただけで、人々が押し寄せ、管理が行き届かなくなる事態が生まれており、さらにはそうした人たちが一気に増えたり減ったりすることで、地域がダメージを被る、という問題まで起きているのです。