世界遺産登録の本来の意味

富岡製糸場の事例を踏まえて言いたいのは、自分たちの町、地域の遺産をいかに観光のために整備できるか、より総括的に考える必要があるということ。もしくは世界遺産への登録が、本当の意味で観光振興につながるのか。

地元の人たちや関係者たちが、それらの問いを吟味した先に、世界遺産登録の本来の意味は生じます。

そこを詰めないまま、「世界遺産登録=観光客誘致の切り札」と短絡させるだけでは、物見遊山的にやってきて、「失望した」と文句を拡散する人を増やすだけです。

日本人が大切に守ってきた場所ならば、世界のブランドに頼る前に「日本が認めた」「自分たちが大切にしている」という視点を、今一度磨いていくべきでしょう。

※本稿は、『観光亡国論』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


観光亡国論』(著:アレックス・カー、清野由美 中公新書ラクレ) 

右肩上がりで増加する訪日外国人観光客。京都、富士山をはじめとする観光地へキャパシティを越えた観光客が殺到し、交通や景観、住環境などでトラブルが続発する状況になっている。本書は作家で古民家再生をプロデュースするアレックス・カー氏とジャーナリストの清野由美氏が、世界の事例を盛り込みながら、建設的な解決策を検討する一冊。真の観光立国を果たすべく、オーバーツーリズムから生じる問題を克服せよ!