セント・パトリック
さて、そんなアイルランドの源流であるケルト文化も5世紀に、キリスト教伝道師のセント・パトリックがキリスト教をもたらしたことで大きく変化します。
このセント・パトリックはイギリスに生まれましたが、16歳の時アイルランドの海賊に誘拐され奴隷として売られ6年間羊飼いとして働かされたそうです。そしてある日、脱出に成功。戻ったセント・パトリックは神学を学び宣教師になります。諸説あるそうですが、ある時、神様から「アイルランドへ戻って布教しなさい」というお告げを受け、セント・パトリックはアイルランドに戻ってキリスト教をもたらし、アイルランドの守護聖人として広く尊敬されています。
このセント・パトリックには数多くの伝説的とも言える話が残っています。
まず、セント・パトリックが布教に向かった当時、アイルランドにはケルト文化そしてドルイド教が根付いていました。そのため伝道師が赴いてもなかなかキリスト教を布教できなかったそうです。
そこでセント・パトリックは本来ドルイド教で火を焚いてはいけない日に、あえて火を焚いて注目を引いたそうです。そして、そのことで罰を受けるかと思いきや、当時のアイルランドの王がセント・パトリックのカリスマ性に感嘆し「まことの神から遣わされた」と信じたといいます。
これによりアイルランドにキリスト教がもたらされました。そしてセント・パトリックは12万人もの人々をキリスト教に改宗させたと言われています。
こんな逸話もあります。アイルランドにはなんと蛇がいないのだそうです。
そのアイルランドに蛇がいないのはセント・パトリックが追い出したからという話があります。
かつてアイルランド南部の湖に賢い蛇がいました。セント・パトリックはその蛇を箱のなかに閉じ込めて湖の中に投げ捨てたといいます。その時セント・パトリックは蛇に「明日になったら出してやる」と約束した上で蛇を箱に閉じ込めたそうで、その湖で漁師たちは箱に閉じ込められた蛇の「もう明日になったかな?」という哀れな声を聞いたという話が残っています。
また、セント・パトリックは太鼓を鳴らして蛇や危険な生き物たちをアイルランドから海へと追いやったそうです。これ以後、これらの危険な生き物はアイルランドの地に触れるだけで死んでしまうのだそうです。
そのためかアイルランドの材木で建てた建築物にはクモが寄り付くことは決してないと、ケンブリッジ大学の書物にも記載があるそうです。