新井素子さん「『昔、病院へ通う親の付き添いが本当に面倒だったなー』って思っていた自分を、只今、反省しております」(撮影:本社写真部)
作家の新井素子さんが、実体験をもとに描いた『定年物語』。主人公・陽子さんと、定年を迎えてずっと家にいる夫・正彦さん、そんな夫婦2人の生活の様子とは――。さらに『定年物語』の刊行際して、新井さんが思う夫婦の今後についてご紹介します。

夫婦間での家事の分担

陽子さんがほんとに辛くなると、正彦さんの方から、「作らなくていいよ、お弁当でも買ってこよう」って言ってくれるんだが……洗濯は、やらないとほんとに家が滞る。けど、正彦さんは、これに気がついていない。このひと、多分、すべての洗濯物はクリーニングに出せばいいと思っているふしがある。

日常の買い物は、正彦さん、その必要性に気がついていない可能性がある。「ほんとに忙しいなら御飯なんて作らなくてお弁当を買ってくればいい」って思っている正彦さんには……食材の他に、洗剤だのゴミ袋だのトイレットペーパーだの、日常生活を送っている以上、絶対に買わなければいけないものが、日々、家庭では発生しているってこと、理解できていない可能性が高い。

一回。

本当に忙しくて、買い物にでる暇がなかった陽子さん、会社から帰ってくる正彦さんから電話があって、「何か買って帰るもの、ない?」って聞かれた時。こう言ったことがあったのだ。