一般的な記載方法

戦前の図式の2万から2万5千分の1の縮尺では現在のように、大学や旧制高等学校などが固有名詞の表示、中学校、高等女学校、各種の実業学校は「中学校」「高女校」「農学校」などと固有名詞なしの略記が一般的であった。

ただし縮尺が大きく、またはスペースに余裕がある場合は「第一高女校」「修猷館(しゅうゆうかん)」(福岡市)などの固有名詞による記載も行われている。

学校の記号に限らず、注記(寺社名など)がある場合、現在は記号を省く決まりだが、戦前の地形図では神社記号の傍らに「八坂神社」、寺院記号を本堂に配した上に「知恩院」などと注記があった。

同じ京都市内の明治末の2万分の1地形図を見ると、京都府庁の北側には学校記号に添えて「女子師範学校」の文字がある。参考までに、現在の地理院地図で大学名のすぐ隣あたりに「文」があれば、だいたい付属中学だ。さらにキャンパスが特定学部のみである場合はカッコ書きがある。

たとえば長野県上田市の「信州大(繊維)」、群馬県前橋市の「群馬大(医)」などがそれだが、同じ場所に2つ以上の学部があると適用されないらしい。

地形図に見る学校の表記<『地図記号のひみつ』より>

埼玉県にある早稲田大学所沢キャンパス(人間科学部・スポーツ科学部)、神奈川県の慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(総合政策学部・環境情報学部)は、それぞれ「早稲田大」「慶應大」の表記のみである。複数学部を表記すれば煩雑だし、学部名が多様化した背景もあるだろう。

かつての地形図では大学が用いる文字とは関係なく「慶応大」「国学院大」などと新字で記載してきたが、最近では大学の表記に合わせている。

上野公園の近くにある「東京藝術大」の藝の字も「平成20年更新版」から旧字に変わった。

そういえばこの藝大が5文字入っているのだから、今も「慶應大」のままの慶應義塾大学は、少なくともスペースに余裕のある日吉や湘南藤沢のキャンパスについてはそろそろ「義塾」を入れてはどうだろう。