記号のある学校、ない学校
新型コロナウイルスの蔓延で「巣ごもり」が長引く中、危機に陥った旅行業界を救う政策が注目を集めたが、大学生の多くは物見遊山どころか、長らくキャンパスへの出入りも満足にできず大変な思いをしてきた。
その後は対面での授業が少しずつ再開されたが、「大学」の地図記号をご存じだろうか。
実は国土地理院で最新の「平成25年図式」には存在しないが、それ以前には「文」マークの傍らに(大)を添えたものが定められていた。それだけでなく短期大学には(短大)、高等専門学校には(専)が付く。
ところが地形図が好きな人でもこの記号にはあまり見覚えがないかもしれない。
というのは、大学、短大、高専については原則として固有名詞を表示し、盲学校、聾学校および特別支援学校については原則として固有名詞を外して「特別支援学校」などとすることになっていたからだ。
大学が固有名詞を記すとはいえ、図上ではなるべく場所をとらないように「東大」や「早稲田大」のように略称で表示する。
省略のしかたはスペースによりけりだろうが、重箱の隅をつつけば、東京大学は広い本郷キャンパスでも「東大」なのに、それより狭い敷地の早稲田大学が「早大」でなく「早稲田大」と不釣り合いだ。
そんなわけで、以前から(大)の表記は大都市部の混み合った場所に限られていた。
2万5千分の1地形図「東京首部」の「昭和43年(1968)修正版」を引っ張り出してみると、キャンパスが街区の中に点在している大学がこの表記で、現JR御茶ノ水駅南側の千代田区神田駿河台周辺では明治大学、中央大学、日本大学の各校舎がこの記号で表記されていた。
明治・中央の本部とおぼしき場所には「明治大学」などの文字が入っているが、近くの専修大学や日本大学は「文(大)」のみの表記であるなど徹底されていない。おそらく他の表記事項との兼ね合いで判断したのだろう。現在の「○○大」ではなく「大学」まで記すのも当時のやり方らしい。