厳しさに頼らない育成方法とは

幸いにも、工藤さんも九重さんも、その検証には格好の存在だと言えます。

理由は二つあります。一つは、厳しく指導された結果、いわゆる“レジェンド”と呼ばれるまでになった方だから。もう一つは、指導者としては、厳しさに頼らない育成法を模索しているからです。

『活の入れ方』(著:工藤公康・九重龍二・藤平信一/幻冬舎)

プロ野球も相撲も、甘さが命取りになる世界です。気を抜いて活躍できるほど甘くはありません。自分を厳しく追い込んで、初めて成立する世界なのです。

いまは厳しい指導をすれば「パワハラだ」と言われ、正しさを押し付けようとすれば「モラハラだ」と言われるようになりました。でも、伝えなければならないことはあるはずなのです。

そこで、厳しさの神髄を身に刻んで知りながら、いっぽうで、それに頼らない育成もしているお二人と話しながら「厳しさは悪なのか」という検証を深めてみたいと考えました。

まずは、九重さんに、どのように厳しい世界で育ったのかを、ご自身の口で語っていただこうと思います。

イメージ的に、相撲界は「汗まみれ」「泥まみれ」で鍛えられている印象がありますが、中でも九重部屋の稽古の厳しさは、よく知られています。そこは本当に悪しき世界なのでしょうか。