野草の楽しみ方
初候
雀始めて巣くう 土筆*ツクシ
「ツクシだれの子、スギナの子」と言われるように、ツクシはスギナという多年生シダ植物の胞子茎にあたる。
栄養茎であるスギナよりひと足先に、暖地では2月の末ごろから顔を出し始める。
子どものころ、野遊びのついでに摘んで帰ったツクシをお母さんが玉子とじなどにして食べさせてくれた経験がある人も多いだろう。
料理としては、この玉子とじが定番だが、他に、おひたし、和え物、きんぴら、炒め物、煮びたしなどでも楽しめるほか、意外な珍味が「つくしご飯」。
ツクシをおいしく食べるコツは、頭が開く前の若いものを使い、ホロ苦さを楽しむこと。
仄聞(そくぶん)したところでは、明治天皇が「つくし料理」をことのほか好まれたという。
次候
桜始めて開く 桜*サクラ
満開のサクラは、日本人の心を浮き立たせ、華やかな気分にしてくれるものだ。
けれども、多くの人は、サクラという樹と向き合うのは年に一度の花見だけであろう。
しかし、サクラは花見以外にも一年中なにがしか楽しみを与えてくれるものなのだ。
たとえば、ヤマザクラの若葉では「さくら餅」を包むし、ヤエザクラの花は塩漬けにして「桜湯」に、そして初夏に熟す果実ではガーネット色に結晶する「さくら酒」ができる。
また、夏期の樹皮は桜色に染め上げる染料になるし、剪定した枝は燻製用の上等なチップとして利用できる……。
このように、こちら側にそういう感性と知識とさえあれば、サクラという樹木はお花見以外にも一年中いろいろと楽しめるのである。